箒川支流の赤川湖畔に湧く温泉地。塩原元湯温泉は古く、大同年間(およそ1200年前)に如葛仙という人が発見したと伝えられている。塩原温泉郷発祥の地であり、元湯と名がついた。当時、85軒の宿や民家があり賑わいをみせていたが、江戸時代初期、万治2年(1659年)晦日の大地震で塩原元湯は山津波によりほぼ埋没してしまった。助かった人々は「新湯」「上塩原」「下塩原」などに移ったために、元湯温泉は人のいない地となった。
今では旅館が3軒ある。雑木の生い茂る原生林の渓谷沿いだけに、秘湯の味わいが強く、東京などに近いこともあって“秘湯ブーム”の中、訪れる人も多い。時間がゆっくりと流れるような旅をしたい人にはオススメの温泉地の一つである。
『大出館』は異なった3つの源泉と8つの浴槽を持っている。内湯にある真黒の『墨の湯』(混浴)は他に類例のない名湯として知られている。『五色の湯』とも云われ、天候によって温泉の色が変わる摩訶不思議な湯でもある。他には緑っぽい『鹿の湯』・露天風呂は『岩の湯』(混浴)・『子宝の湯』(女性専用)・『藤の湯』(貸切)などがあって秘湯マニアにはたまらない。名古屋から遠くても行きたい温泉宿である。
「日本秘湯を守る会 会員の宿」2005年6月下旬取材
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