本州のほぼ中央に位置する『八ヶ岳連峰』は長野県と山梨県をまたいでいる。『夏沢峠』を境に『北八ヶ岳』と『南八ヶ岳』に分かれ『北八ヶ岳』の針葉樹の原生林や湖沼が点在する優しい雰囲気がする地域に比べ『南八ヶ岳』は岩稜帯で、主峰『赤岳』(2,899m)を始め、険しい山岳地帯の表情を持っている。南北に、およそ10ほどの高い峰々が連なっており、それらを総称して『八ヶ岳連峰』と呼んでいる。
その中でも『硫黄岳』の山頂は礫地で、北面は爆裂火口になっている。尾根を歩くと硫黄独特の臭気がただよう。その東斜面の中腹、標高2,100mの高所に『本沢温泉』は位置する。『天狗岳』(2,646m)『硫黄岳』(2,765m)へは、それぞれ約2時間ほどで登れる登山基地にもなっている。本館奥からは『天狗岳』と『硫黄岳』が屏風のように立ちはだかって、かなりの迫力がある。
『本沢温泉』へは、『松原湖駅』から『本沢林道』に入り『稲子湯』経由で『本沢温泉入口』駐車場に停めて歩くことになる。ここから『本沢温泉』までは徒歩で2時間以上かかるが、4WDであれば、さらに登っていくこともでき、1時間ちょっとで『本沢温泉』まで行ける。しかし、四駆でも横幅があると傷がつく恐れがあるほど狭くガタガタ道であることを覚悟してほしい。登山道は冬にはキャタピラの雪上車が通くらいだから整備されており、歩きやすいから大丈夫だ。
『本沢温泉』は江戸末期、文化文政の頃に猟師により発見・明治7年創業・平成7年新館を増築。夜の8時以降はランプの明かりしかない。まさに“秘湯の一軒宿”で、全く異なった2つの源泉の温泉を楽しむことができる“秘境の秘湯”と呼ぶにふさわしく『硫黄岳』を目前に、標高2,150mの野天風呂『雲上の湯』は実にワイルドで爽快そのもの。“通年営業”では日本最高所を誇る(ちなみに立山室堂『みくりが池温泉』は2,410mですが、冬期は休業です)また、施設内にある内湯の檜風呂『こけももの湯』は“山のいで湯”の風情充分。また、冬季限定の湯小屋『石楠花風呂』もある。
「日本秘湯を守る会 会員の宿」2006年8月上旬取材
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